当院は、人工心肺装置を用いた心臓外科を、世界でもトップクラスの成績で行うことができるチームが所属している病院です。術後の心臓のお薬もほぼ全ての患者様で不要となっております。その術式は世界でも注目されており、海外への出張手術、学術論文発表や学会発表などで、その技術を伝えているほどです。また、先天性心疾患や不整脈などの外科治療にも対応しております。
僧帽弁閉鎖不全症の治療には内科的治療と外科的治療があります。近年、獣医療において心臓外科治療の確立が進み、治療の選択肢が広がりました。しかし、米国獣医内科学会ガイドライン(Keene BW etc. J Vet Intern Med. 2019;33:1127-1140.)では、心臓外科の適応基準を「成績の良い施設」「良好な長期成績と低い合併症発生率を実証している限られた施設」での実施を推奨すると記載されており、手術を実施できる施設が限られているが故に、外科治療という選択肢を得ない患者様が多いという現実があります。
当チームでは、非常に良好な手術成績と術前のステージに関わらず術後長期生存が望めることを学術論文や学会にて発表し(K. Matsuura, M. Hasegawa etc. JVC. 2022;42:74-82.)、エビデンスに基づき外科治療を提案させて頂いております。
動脈管開存症に対する外科治療です。動脈管開存症は、胎児期に全身循環に必要な動脈管が、出生後も閉鎖せずに残ってしまう先天性心疾患の1つです。動脈管を閉鎖せずにいると、うっ血性心不全などに至る可能性があり、早期外科的治療が必要な疾患です。
黄色の動脈管を閉鎖せずにいると、大動脈の血液が動脈管を迂回し肺動脈へ流れるため(➀大動脈→②動脈管→③肺動脈)、肺・左房・左室に血液がうっ滞してしまいます。うっ滞が大きくなり、流れが逆転してしまった場合(③肺動脈→②動脈管→➀大動脈)、外科的治療は禁忌となるため、早期発見、早期外科的治療が必要です。
肺動脈弁狭窄症は右室から肺に向かうまでの間の肺動脈という通路に狭窄が生じてしまう先天性心疾患です。狭窄があることにより右室や右房に血液がうっ滞しやすく、不整脈や右心不全、突然死を引き起こす可能性があります。手術方法には、バルーン拡張術(図6)、ステント留置術(図7)や人工心肺装置を用いた肺動脈弁拡張術などがあります。ステント留置術は当チームが日本で初めて実施し良好な手術成績をおさめております (第118回日本循環器学会優秀賞受賞)。